自営業・フリーランスに育休はない?出産前後に使える制度と手続き

自営業・フリーランスの出産と育児の制度(育休給付がないとき何が使えるか) もらえるもの

確認日:2026年10月11日 / 対象:国民健康保険・国民年金(第1号被保険者)に入っている個人事業主・フリーランス(出産する人・その家族) 制度は改正によって変わることがあります。手続きの前に、必ず自分の市区町村や日本年金機構の公式ページで最新の内容を確認してください。この記事は個別の相談ではありません。

会社員なら、出産や育児で仕事を休むと、育児休業給付金や出産手当金が出る、と聞きます。では、自営業・フリーランスはどうなるのでしょうか。

結論から言うと、この2つは、自営業・フリーランスの制度ではありません。その代わりに、出産育児一時金・国民年金の免除・国保税の減額・児童手当など、使える制度が別にあります。この記事では、会社員との違いと、自営業・フリーランスが使える制度を、公式の情報で整理します。

この記事の読み方

  • 国の制度(全国共通)と、自治体ごとに違う内容を分けて書いています。
  • 手続きの窓口や金額の例は、福山市(広島県)のものです。ほかの市区町村は、自分の自治体のページで確認してください。
  • 対象は、国民健康保険と国民年金(第1号被保険者)に入っている人です。会社などで働いて、健康保険・厚生年金・雇用保険に入っている人は、勤め先に確認してください。

この記事でわかること

  • 育児休業給付金と出産手当金が、自営業・フリーランスには、なぜないのか
  • 出産前後に、自営業・フリーランスが使える制度(時期別)
  • 子どもが生まれたあとの手続き(国保の届出・児童手当)
  • 取引先に、妊娠・出産・育児への配慮を申し出られるルール(フリーランス法)

結論:育休の給付と出産手当金は会社員の制度。自営業は「免除・減額・一時金」で備える

会社員の出産・育児の制度と、自営業の場合育児休業給付金は雇用保険の被保険者が対象で、自営業・フリーランスは対象外。出産手当金は健康保険の制度で、国保には定めがない(国民健康保険法・福山市条例)。出産育児一時金は国保にもある(福山市は最大50万円)。保険料の免除は、国民年金の免除と国保税の減額(福山市)。児童手当は出生の翌日から15日以内に申請。会社員にある制度、自営業の場合は?育児休業給付金会社員:雇用保険の被保険者が対象自営業:対象外(雇用保険の制度)出産手当金会社員:健康保険(産前42日〜産後56日)自営業:国保に定めなし(福山市も)出産育児一時金会社員:健康保険から自営業:国保から(福山市は最大50万円)保険料の免除・減額会社員:別の制度(事業主を通じて)自営業:国民年金の免除+国保税の減額児童手当どちらも、住んでいる市区町村へ出生の翌日から15日以内に申請※自営業=国保・国民年金第1号。福山市の例
会社員にある制度と、自営業・フリーランスの場合
  • 育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が対象です。自営業・フリーランスは、対象になりません。
  • 出産手当金は、健康保険の制度です。国民健康保険には、定めがありません(福山市の条例も同じ)。
  • 代わりに、出産育児一時金(国保)、国民年金の産前産後免除と育児免除、国保税の産前産後の減額、児童手当を、期限内に手続きします。
  • 休んでいる間の収入を、直接補う公的な給付は、この記事で確認した範囲では、見当たりません(確認できていない部分は、後ろに書きました)。
  • 取引先には、フリーランス法にもとづいて、妊娠・出産・育児への配慮を申し出ることができます。

会社員にあって、自営業にないもの

育児休業給付金(雇用保険)

厚生労働省・ハローワークの案内(2026年8月1日改訂版)では、育児休業給付金や出生時育児休業給付金(産後パパ育休)、出生後休業支援給付金は、雇用保険の被保険者が育児休業などを取ったときに支給される給付です。

  • 同じ案内の中に、「配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない」場合の扱いが出てきます。自営業者やフリーランスは、雇用される労働者ではない、という区別が、制度の前提になっています。
  • つまり、自営業・フリーランス本人は、この給付の対象になりません。
  • 配偶者が会社員なら、その配偶者は、勤め先を通じて育児休業の給付を受けられる場合があります。要件や手続きは、配偶者の勤め先やハローワークに確認してください。

(出典:厚生労働省・ハローワーク「育児休業等給付の内容と支給申請手続」2026年8月1日改訂版)

出産手当金(健康保険)

出産手当金は、健康保険法に定められた給付です。

  • 被保険者が出産したときに、出産の日以前42日(多胎は98日)から、出産の日後56日までの間に、仕事を休んだ期間に支給されます(健康保険法 第102条)。

国民健康保険は、どうでしょうか。

  • 国民健康保険法 第58条は、市町村に、出産育児一時金と葬祭費の支給を行うよう定めています。傷病手当金などは、条例で定めた場合に「行うことができる」とされる任意の給付です。条文に「出産手当金」はありません。
  • 福山市の国民健康保険条例にも、「出産手当金」の定めは見つかりません(条文を検索して確認)。国保の傷病手当金については、国保に傷病手当金はない?個人事業主の備え方で整理しています。
  • ほかの市区町村が、条例で独自の給付を定めている可能性はあります。自分の自治体の国保の案内で、確認してください。

(出典:国民健康保険法 第58条、健康保険法 第102条〈e-Gov法令検索〉、福山市国民健康保険条例)

会社員の「社会保険料の免除」

会社員が産前産後休業・育児休業を取ったときの社会保険料の免除は、事業主を通じた別の制度です。自営業・フリーランスは、国民年金の免除と国保税の減額という、別の仕組みを使います(次の章)。

自営業・フリーランスが使える制度(時期別)

時期 制度 内容(福山市の例) くわしくは
妊娠中 妊婦への給付 妊娠支援金5万円+子育て支援金(胎児1人につき)5万円 出産育児一時金とは
妊娠中〜産後 国民年金の産前産後免除 出産予定月の前月から4か月(多胎は6か月)の保険料が免除。納付したものとして年金額に反映 産前産後の国民年金保険料免除
妊娠中〜産後 国保税の産前産後の減額 同じ4か月(多胎は6か月)、所得割額と均等割額が減額。届出が必要 国保税が高い・払えないとき
出産 出産育児一時金(国保) 出生児1人につき488,000円+産科医療補償制度の加算12,000円=最大50万円 出産育児一時金とは
産後〜1歳 国民年金の育児免除(2026年10月〜) 子が1歳になるまで(実母は産前産後免除に続く9か月、実父は最大12か月) 産前産後の国民年金保険料免除
出生後 国保の加入届出・児童手当 次の章
翌年 医療費控除 出産費用・通院費など。一時金は差し引く 医療費控除のやり方
  • 妊婦への給付、国民年金・国保税の免除と減額は、届出が必要です。早めに手続きすると、安心です(予定日の6か月前から届出ができます)。
  • 金額や日付は、確認日時点の情報です。手続きの前に、公式ページで確認してください。

子どもが生まれたあとの手続き

国保の加入の届出

福山市の案内では、「こどもが生まれたとき」は、国保の届出が必要です。届出は、市役所の保険年金課・市民課や、各支所・分所・分室でできます。必要なものは、届出人の本人確認書類と、世帯主と届出に該当する人のマイナンバーが確認できるものです(福山市「国民健康保険の手続き」、2026年3月16日更新)。

児童手当

こども家庭庁の案内では、児童手当は、0歳から高校生年代(18歳に達する日以後の最初の3月31日まで)の子を養育している人が対象です。

児童の年齢 月額(児童1人あたり)
3歳未満 15,000円(第3子以降は30,000円)
3歳以上〜高校生年代 10,000円(第3子以降は30,000円)
  • 支給時期:毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月に、前の2か月分が支給されます。
  • 申請:出生の日の翌日から15日以内に、現住所の市区町村へ申請が必要です(里帰り出産でも、現住所の市区町村)。
  • 申請が遅れると、原則、遅れた月の分は受けられません。出生日が月末に近いときは、申請日が翌月になっても、翌日から15日以内なら、申請した月の分から支給されます。
  • 令和6年10月の制度改正で、所得の上限を超えて受給していなかった人も、申請すれば対象になることが、こども家庭庁の案内に書かれています。

(出典:こども家庭庁「児童手当制度のご案内」「もっと子育て応援!児童手当」)

福山市での申請の流れは、運営者のもうひとつのサイト「フクヤマファミリーライフ」でも整理しています(外部サイト)。

取引先に、配慮を申し出られる(フリーランス法)

2024年11月1日から、フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)が施行されました。従業員を使用しない個人(または、代表者1人だけの法人)が、事業者から仕事を受けるときの法律です。

妊娠・出産・育児への配慮(第13条)

業務委託をしている事業者(発注者)は、フリーランスからの申出に応じて、妊娠・出産・育児・介護と仕事を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。

業務委託の期間 発注者の義務
6か月以上(更新して6か月以上続く場合を含む) 必要な配慮をしなければならない(義務)
6か月未満 必要な配慮をするよう努める(努力義務)
  • 「育児」は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育することを指します。
  • 申出は、現に育児をしている人に限りません。育児・介護を行う具体的な予定のある人も、含まれます(厚生労働省の指針)。

配慮の例(厚生労働省の指針)

指針に、例が載っています(例示です。実際は、話し合いで決めます)。

  • 妊婦健診がある日の打合せの時間を調整する
  • 妊娠に起因する症状で急に対応できなくなる場合の対応を、あらかじめ取り決めておく
  • 出産のため離れた地域に住むことになったので、成果物の納入方法を変更する
  • 子の急病などで作業時間が確保できなくなったので、納期を少し延ばす
  • 介護のために、特定の曜日はオンラインで就業する

発注者がしてはいけないこと

指針では、次の行為は望ましくない取扱いとされています。

  • 申出をためらわせる(申出に、膨大な書類を求める。「周囲に迷惑がかかる」と言う)
  • 申出をしたこと、配慮を受けたことだけを理由に、契約の解除などの不利益な取扱いをする

注意:発注者が配慮を行うことが難しい場合は、できない旨と理由を説明することが求められています。つまり、申出をすれば、希望どおりになるわけではありません。まずは早めに、話し合うことが大切です。相談先や、法の詳しい解釈は、公式の案内(厚生労働省・公正取引委員会)で確認してください。

(出典:フリーランス・事業者間取引適正化等法 第13条、厚生労働省・公正取引委員会ほか「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」〈令和6年10月18日改定〉の指針)

休んでいる間の収入は?

この記事で確認した範囲では、自営業・フリーランス向けに、出産手当金や育児休業給付金のように、休んだ間の収入を直接補う公的な給付は、見当たりません。ただし、「ない」と断定はできません(新しい制度が始まることもあるため)。次の点を、確認してください。

  • 支出を減らす制度:国民年金の免除、国保税の減額、児童手当、出産育児一時金(上の表)
  • 仕事の調整:取引先への配慮の申出(フリーランス法)
  • 確認できていないこと:自治体独自の給付や、今後始まる制度は、自分の自治体や、厚生労働省・こども家庭庁の案内で確認してください。

手続きの前に確認すること

  • 自分は、国保と国民年金(第1号)か(会社の健康保険・雇用保険に入っている場合は、勤め先に確認)
  • 出産予定日を確認した(免除・減額の届出は、予定日の6か月前から)
  • 出産する病院で、直接支払制度を使えるか確認した
  • 妊婦への給付の申請期間を確認した
  • 国民年金・国保税の産前産後の届出をした(窓口:住民登録の市区町村)
  • 出生後:国保の届出、児童手当(出生の翌日から15日以内)
  • 取引先への申出を、早めにするか検討した(6か月以上の契約かを確認)
  • 領収書・明細書を保管した(翌年の医療費控除)

ケースで確認(仮の例)

※この節は、実在の人物の体験談ではありません。仕組みを分かりやすく説明するための仮の例です。月の数え方は、記事11の式にあてはめています。実際の対象月や金額は、出産予定日・自治体などによって変わります。

例①:Rさん(個人事業主・国保)の出産予定日は、2027年3月15日。ひとりの妊娠

  • 国民年金の産前産後免除:出産予定日の属する月(3月)の前月から4か月間=2月・3月・4月・5月
  • 国保税の産前産後の減額(福山市):同じく2月〜5月の4か月間
  • 届出:出産予定日の6か月前(2026年9月ごろ)から可能
  • 出産後:国保の届出と児童手当の申請(出生の翌日から15日以内)
  • 育休給付金や出産手当金は、自営業のRさんには、ない。出産育児一時金(最大50万円)と、免除・減額を使う

例②:Sさん(フリーランスのWebデザイナー)は、ある会社と、1年間の業務委託契約を結んでいる。妊娠が分かった

  • 契約が6か月以上なので、フリーランス法では、会社に必要な配慮をする義務がある
  • Sさんは、妊婦健診の日に、打合せの時間を調整してほしいと、会社に申し出た(指針の例にある内容)
  • 会社は、話し合って、調整する。難しい場合でも、できない理由を説明する必要がある
  • 会社が、申出をしたことだけを理由に契約を解除するのは、望ましくない取扱いとされている

よくある質問

自営業でも、育児休業給付金をもらえますか?
育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が対象の給付です(厚生労働省・ハローワークの案内)。自営業・フリーランスだけで働いている人は、対象になりません。会社などで働いて、雇用保険に入っている場合は、勤め先に確認してください。
配偶者が会社員です。配偶者は育児休業給付金をもらえますか?
配偶者が雇用保険の被保険者で、要件を満たせば、配偶者自身が受け取れる場合があります。要件や手続きは、配偶者の勤め先やハローワークで確認してください。
国保にも、出産手当金のような給付はありますか?
国民健康保険法には、出産育児一時金や葬祭費の定めはありますが、出産手当金の定めはありません。福山市の国保条例にも見つかりません。ほかの市区町村の独自の給付は、自分の自治体のページで確認してください。
国民年金の免除は、届出をしないと、どうなりますか?
この記事では確認できていません。届出が必要かどうかは、日本年金機構または市区町村の国民年金窓口で確認してください。
フリーランス法の配慮は、誰が対象ですか?
従業員を使用しない個人(または、代表者1人だけの法人)で、事業者から業務委託を受けている人です。業務委託が6か月以上なら、発注者には配慮の義務があります。6か月未満の場合は、努力義務です。
妊娠中でも、申し出ることはできますか?
できます。厚生労働省の指針では、育児・介護を行う具体的な予定のある人も、申出ができるとされています。妊婦健診の日の調整などが、例に挙がっています。
児童手当は、いつまでに申請しますか?
出生の日の翌日から15日以内に、現住所の市区町村へ申請します。遅れると、原則、遅れた月の分は受けられません(こども家庭庁)。

あわせて読みたい

この記事の確認方法

  • 厚生労働省・ハローワークの「育児休業等給付の内容と支給申請手続」(2026年8月1日改訂版)で、育児休業等給付が雇用保険の被保険者を対象としていること、「雇用される労働者でない」自営業者・フリーランスの区別を確認しました。
  • e-Govの法令検索で、国民健康保険法 第58条と、健康保険法 第102条の条文を確認しました。国民健康保険法の条文に「出産手当金」がないことを、条文の検索で確認しました。
  • 福山市の国民健康保険条例(令和8年6月24日施行)の原文で、出産育児一時金の定めがあり、「出産手当金」の定めがないことを、条文の検索で確認しました。
  • 福山市の「国民健康保険の手続き(加入や脱退など)」(2026年3月16日更新)で、「こどもが生まれたとき」に国保の届出が必要なことを確認しました。
  • こども家庭庁の「児童手当制度のご案内」「もっと子育て応援!児童手当」で、支給対象、月額、支給時期、出生後15日以内の申請を確認しました。
  • フリーランス法の第13条と、厚生労働省・公正取引委員会ほかのガイドライン(令和6年10月18日改定)の指針で、配慮の義務(6か月以上)・努力義務(6か月未満)、対象の範囲、配慮の例、望ましくない取扱いを確認しました。
  • 産前産後の国民年金免除・育児免除・国保税の減額・出産育児一時金・国保税の子ども分は、記事11・14・20で確認した内容です。
  • 休んだ間の収入を直接補う公的な給付が、ほかにあるか、ほかの自治体の独自の給付、児童手当の所得の取り扱いの細かい点は、確認できていないため、断定せず、公式ページで確認するよう書いています。
  • 確認日:2026年10月11日。

最終更新日:2026年10月11日

公式リンク(確認日:2026年10月11日)