確認日:2026年10月9日 / 対象:個人事業主・フリーランス(令和8年=2026年の取引から使える内容。一部は令和9年分以後) 制度は改正によって変わることがあります。手続きの前に、必ず国税庁の最新の案内を確認してください。この記事は税務相談ではありません。個別の判断は、税務署・税理士にご相談ください。
請求書をメールのPDFで受け取る、ネット通販の領収書がデータで届く、会計ソフトで帳簿をつける……。こうした電子データには、保存のルールがあります。さらに、インボイス制度では、帳簿と請求書の保存が、消費税の仕入税額控除の条件になっています。
この記事では、電子帳簿保存法(電帳法)とインボイスの保存を、個人事業主が最低限知っておきたい範囲で整理します。令和9年分から、青色申告特別控除が75万円になる場合(要件あり)もまとめます。
この記事の読み方
- 電帳法もインボイスも、国の制度(全国共通)です。お住まいの地域によって変わりません。
- 2つは別の制度です。電帳法は「どう保存するか」のルール、インボイスは「消費税の仕入税額控除を受けるために、何を保存するか」のルールです。
- 消費税を申告しない免税事業者の方は、インボイスの仕入側の保存は、直接は関係しないことがあります(判断の材料はインボイス経過措置まとめ)。電帳法の電子取引データ保存は、免税事業者でも対象です。
この記事でわかること
- 電帳法の3つの区分と、必ず対応が必要なもの(電子取引データ保存)
- 電子取引データの保存のルールと、簡単な方法(索引簿・ファイル名)
- 保存期間
- インボイスで保存するもの(帳簿・請求書、少額特例)
- 令和9年分から青色申告特別控除が75万円になる要件
結論:電子で受け取った・送った請求書や領収書は、データで保存する。ファイル名のルールづくりが、いちばん簡単
- 電帳法は、3つの区分に分かれています。そのうち、希望者だけが使うのは①電子帳簿等保存と②スキャナ保存で、個人事業主も対応が必要なのは③電子取引データ保存です(国税庁)。
- ③電子取引データ保存は、請求書・領収書などをデータでやりとりしたときに、そのデータを保存する義務です。受け取ったときも、送ったときも対象です。PDFやスクリーンショットでも構いません。
- 保存のルールは、①改ざん防止の措置、②ディスプレイなどの備付け、③「日付・金額・取引先」で検索できること。基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の方などは、税務調査のときにデータをダウンロードできるようにしていれば、③の検索要件は不要です。
- 紙の領収書や請求書を、データにしなければならないわけではありません。紙でやりとりしたものは、紙のまま保存して構いません。
- インボイスで消費税の仕入税額控除を受けるには、帳簿と適格請求書などの保存が必要です。1万円未満の課税仕入れは、少額特例で帳簿だけの保存でよい場合があります(令和11年9月30日まで)。
- 令和9年分以後は、一定の要件を満たすと、青色申告特別控除が75万円になります。
(出典:国税庁「電子帳簿等保存制度」の案内(令和8年6月)、「電子取引データの保存方法」、タックスアンサー No.6498・No.6625、インボイスQ&A 問111)
電帳法の3つの区分
国税庁の案内では、電子帳簿等保存制度は、次の3つに分かれています。
| 区分 | 使うかどうか | 内容 |
|---|---|---|
| ① 電子帳簿等保存 | 希望者のみ | 会計ソフトなどで最初から一貫してパソコンで作った帳簿や、自分で作った請求書の控えを、プリントアウトせず、データのまま保存する |
| ② スキャナ保存 | 希望者のみ | 紙で受け取った領収書・請求書などを、スマホやスキャナで読み取ったデータで保存する(紙の代わりに) |
| ③ 電子取引データ保存 | 法人・個人事業者は対応が必要 | データでやりとりした請求書・領収書などを、データで保存する |
- ①と②は、使うかどうかを自分で選べます。紙のまま保存しても構いません。
- ③は、対応が必要です。申告所得税・法人税に関して、帳簿や書類を保存する義務のある方が対象です。個人事業主は、白色申告でも帳簿の記帳・保存の制度があります(経費の考え方と家事按分、国税庁 No.2080)。
③ 電子取引データ保存:何を、どう保存する?
何が対象か
紙でやりとりしていたら保存が必要な書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)に相当するデータです。たとえば、次のようなものです。
- メールに添付された請求書PDF
- ネット通販やクラウドサービスの画面からダウンロードした領収書データ
- クラウド型の請求書サービスで送受信した請求書
受け取ったときだけでなく、送ったときにも保存が必要です。紙でやりとりしたものを、わざわざデータにする必要はありません。
保存のルール
国税庁の案内では、次の3つを満たす必要があります。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| ① 改ざん防止 | 次のいずれかの措置:タイムスタンプが付いたデータを受け取る/受け取ったデータに速やかにタイムスタンプを付ける/訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除できない)システムで受け渡し・保存する/改ざん防止のための事務処理規程を作って守る |
| ② 見られる環境 | ディスプレイやプリンタなどを備え付ける |
| ③ 検索できる | 「日付・金額・取引先」で検索できる |
- 事務処理規程のサンプルは、国税庁のホームページにあります。システムにお金をかけずに対応できる方法です。
- ③の検索は、基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下などの方は、税務調査のときに、データをダウンロードできるようにしていれば、不要です。
簡単な方法:ファイル名のルール、または索引簿
国税庁は、専用のシステムがなくてもできる、次の方法を案内しています。
- 表計算ソフトで「索引簿」を作る:連番・日付・金額・取引先・備考を、1行ずつ記録する。
- 規則的なファイル名を付けて、特定のフォルダにまとめる:例えば、「日付_金額_取引先」の形でファイル名を付けると、フォルダの検索機能が使える。
※保存するファイル形式は問いません。PDFに変換したもの、スクリーンショットでも構いません(国税庁)。
守れなかったとき:猶予措置
システムの整備が間に合わないなど、相当の理由がある場合は、猶予措置があります。事前の申請は不要です。ただし、次の2つに応じられるようにしておく必要があります。
- 税務調査のとき、電子取引データのダウンロードの求めに応じること
- 電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めに応じること
システムが整っているのに、資金繰りや人手不足などの理由だけで保存していない場合は、「相当の理由がある」とは認められません(国税庁)。
保存期間
| 保存するもの | 期間の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 帳簿(白色申告者の記帳制度で作った帳簿) | 7年間 | 国税庁 No.2080 |
| 請求書・領収書など、業務に関して作成・受け取った書類 | 5年間 | 国税庁 No.2080 |
| 消費税の帳簿・請求書等(仕入税額控除のため) | 課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間 | 国税庁 No.6625 |
- 消費税の保存は、6年目と7年目は、帳簿または請求書等のどちらか一方を保存すればよい、とされています(No.6625)。
- 青色申告の帳簿書類の保存期間や要件は、青色申告承認申請書の出し方と、確定申告の流れで整理しています。
- 電子取引データの保存期間は、この記事では確認できていません。対応する書類の保存期間にあわせて、税務署の案内で確認してください。
インボイスで保存するもの
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の申告をする課税事業者に関係します。国税庁(No.6498・No.6625)の案内は、次のとおりです。
売る側(適格請求書発行事業者)
- 取引の相手方(課税事業者)の求めに応じて、適格請求書を交付する義務があります。
- 交付した適格請求書の写しを保存する義務があります。
- 請求書をデータで送った場合は、電子取引データ保存の対象にもなります。
買う側(仕入税額控除を受けたい)
- 仕入税額控除を受けるには、一定の事項を記載した帳簿と、適格請求書(インボイス)などの請求書等の保存が要件です。
- 適格請求書は、登録を受けた適格請求書発行事業者だけが交付できます。
- 免税事業者などから仕入れた場合の経過措置(令和13年9月30日まで、80%→70%→50%→30%)は、インボイス経過措置まとめで整理しています。
少額特例:1万円未満は帳簿のみ
基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入れで、支払対価(税込み)が1万円未満のものは、帳簿だけを保存すれば、仕入税額控除を受けられます(国税庁 Q&A 問111)。
- 適格請求書発行事業者以外からの仕入れでも、1万円未満なら対象です。
- 帳簿に、「少額特例の適用がある旨」を記載する必要は、ありません。
- 個人事業者の基準期間は、その年の前々年、特定期間は、その年の前年1月1日から6月30日までです。
令和9年分から:青色申告特別控除が75万円に
国税庁の令和8年6月の案内によると、青色申告特別控除は、令和9年分以後、75万円になる場合があります(65万円から75万円に引き上げ)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の年分 | 令和9年分以後の所得税(2028年の確定申告から)。令和8年分は、これまでどおり65万円が最高 |
| 要件 | 「優良な電子帳簿」または「デジタルシームレス保存」のどちらかの要件を満たし、電子申告(e-Tax)をすること |
| 前提 | 事業所得または不動産所得の事業で、正規の簿記の原則(複式簿記)で記帳し、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して、期限までに提出すること |
| 手続き | あらかじめ、届出書の提出が必要(適用を受ける年分の法定申告期限までに提出。すでに優良な電子帳簿で65万円の控除を受けている人は、改めて届出書は不要) |
| 所得税の青色申告承認申請 | これから青色申告を始めるなら、青色申告承認申請書も必要 |
優良な電子帳簿とは
仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿を、「訂正・削除の履歴が残る」「帳簿間の記録事項に相互関連性がある」「日付・金額・相手方などで検索できる」など、定められた要件を満たして電子保存したものです。届出をして使うと、過少申告加算税が5%軽減される措置もあります(国税庁)。
デジタルシームレス保存とは
請求書などの電子取引データを、自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組みです。要件を満たすと、重加算税の10%加重の適用除外(令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税)などの優遇があります。
どのソフトを選べばいい?
国税庁の案内では、JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)の認証を受けたソフトが、優遇措置の機能要件を満たしているとされています。認証マークが参考になります。ただし、システムの説明書の備付けやディスプレイの備付けなど、機能以外の要件も必要です。自分のソフトが対応しているかは、各ソフトの案内と、国税庁・JIIMAのページで確認してください。
ケースで確認(仮の例)
※この節は、実在の人物の体験談ではありません。保存の仕方を分かりやすく説明するための仮の例です。取引先の名前や金額は、すべて架空です。
例①:ファイル名のルールで、電子取引データを保存する
Cさんは、請求書や領収書がメールやネットで届く個人事業主です。「日付_金額_取引先」のルールで、ファイル名を付け、フォルダ「電子取引」にまとめました。
- 20261031_55000_サンプル商会.pdf(請求書)
- 20261105_3300_サンプル書店.pdf(領収書)
- 20261120_110000_架空制作所.pdf(請求書)
フォルダの中を検索すれば、日付・金額・取引先で探せます。改ざん防止は、事務処理規程(国税庁のサンプルを参考にした、自分用の決まり)を作って、守ることにしました。
例②:索引簿(表計算ソフト)で管理する
| 連番 | 日付 | 金額 | 取引先 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 20261031 | 55000 | サンプル商会 | 請求書 |
| 2 | 20261105 | 3300 | サンプル書店 | 領収書 |
| 3 | 20261120 | 110000 | 架空制作所 | 請求書 |
例③:少額特例
課税事業者で、基準期間の課税売上高が1億円以下のDさんが、消耗品を、税込み8,000円(1万円未満)で、免税事業者の店から買いました。適格請求書がなくても、帳簿に記載して保存すれば、少額特例で仕入税額控除の対象になります(令和11年9月30日までの課税仕入れ)。
注意すること
- 電子取引データの保存は、紙に印刷して保存するだけでは足りません。国税庁の案内では、データでやりとりした書類は、データを保存することになっています(猶予措置を除く)。
- 電子取引データ保存は、白色申告でも、帳簿・書類の保存義務がある方は対象です。
- 会計ソフトを使っている場合でも、取引先から受け取ったデータの保存は、自分で対応が必要な場合があります。ソフトの機能を確認してください。
- 令和9年分以後の青色申告特別控除75万円は、制度の見直しで要件が変わる可能性があります。国税庁の最新の案内で確認してください。
手続きの前に確認すること
- メールやネットで受け取った請求書・領収書を、データのまま保存している
- ファイル名のルール(日付_金額_取引先)、または索引簿を決めた
- 改ざん防止の方法(事務処理規程など)を決めた
- ディスプレイ・プリンタで、すぐ表示・印刷できる
- 紙の領収書は、紙のまま保存している(データにするのは任意)
- 帳簿は7年、請求書・領収書は5年を目安に保存する
- インボイス:課税事業者の場合、帳簿と適格請求書を保存する(1万円未満は少額特例)
- 令和9年分から青色申告特別控除75万円を狙うなら、届出と電子申告の準備を確認した
よくある質問
- 個人事業主も、電子取引データの保存が必要ですか?
- 必要です。申告所得税に関して帳簿・書類の保存義務のある方は、電子取引データを保存する必要があります(国税庁)。
- 紙の領収書も、データにしなければいけませんか?
- いいえ。紙でやりとりしたものを、データにする必要はありません(国税庁)。スキャナ保存は、希望者のみの制度です。
- PDFにしたり、スクリーンショットで保存してもいいですか?
- 構いません。保存するファイル形式は問われません(国税庁)。
- 検索のためのシステムを入れないといけませんか?
- 専用のシステムがなくても、表計算ソフトの索引簿や、規則的なファイル名で対応できます(国税庁)。基準期間の売上高が5,000万円以下の方などは、ダウンロードの求めに応じられれば、検索要件は不要です。
- 守れていなかったら、どうなりますか?
- 相当の理由がある場合は、猶予措置があります。ただし、ダウンロードの求めと、プリントアウトの提示の求めに応じられることが必要です(国税庁)。この記事では、罰則など、これ以上の扱いは確認できていません。
- インボイスでは、何を保存しますか?
- 仕入税額控除を受けるには、帳簿と、適格請求書などの請求書等を保存します。売る側(適格請求書発行事業者)は、交付した適格請求書の写しを保存します(国税庁)。
- 1万円未満の買い物は、請求書がなくてもいいですか?
- 一定の要件(基準期間の課税売上高1億円以下など)を満たす場合は、少額特例で、帳簿だけの保存で仕入税額控除を受けられます。令和11年9月30日までの課税仕入れが対象です(国税庁)。
- 青色申告特別控除は、いつから75万円ですか?
- 令和9年分以後(2028年の確定申告から)で、優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存の要件を満たし、電子申告をする場合です。届出書の提出が必要です(国税庁、令和8年6月の案内)。令和8年分は、最高65万円です。
- どのソフトを使えばいいですか?
- 国税庁は、JIIMA認証のソフトが、優遇措置の機能要件を満たしているとしています。ご自身が使うソフトが対応しているか、各ソフトの案内で確認してください。この記事では、特定のソフトの紹介はしていません。
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この記事の確認方法
- 国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」(令和8年6月)の原文で、3つの区分、電子取引データ保存の要件、優良な電子帳簿・デジタルシームレス保存の優遇措置、青色申告特別控除75万円(令和9年分以後)の要件と届出を確認しました。
- 国税庁「電子取引データの保存方法をご確認ください」(令和6年1月以降用)で、対象となるデータ、索引簿・ファイル名の方法、猶予措置を確認しました。
- 国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました」(令和5年4月)で、3区分の説明、検索要件の見直し、宥恕措置の廃止、猶予措置を確認しました。
- 国税庁タックスアンサー No.6498・No.6625(令和8年4月1日現在法令等)で、インボイスの保存要件、交付義務と写しの保存義務、保存期間を確認しました。
- 国税庁のインボイスQ&A 問111で、少額特例の内容と期間を確認しました。
- 国税庁タックスアンサー No.2080で、白色申告者の帳簿・書類の保存期間を確認しました。
- 会計ソフトごとの具体的な操作、タイムスタンプの付与方法、スキャナ保存の細かい要件、優良な電子帳簿の細かい要件、デジタルシームレス保存の対応ソフトの選び方、簡易課税・2割特例・3割特例を使う人の帳簿の扱いは、確認できていません。
- 確認日:2026年10月9日。
最終更新日:2026年10月9日

